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モバイルバッテリー火災リスク評価 および防護ポーチ市場性の分析について

 技術情報

日本国内におけるモバイルバッテリーの普及状況、火災リスク評価、ならびに防護ポーチの市場性について、統計的推定と市場動向を踏まえ整理いたしましたのでご報告申し上げます。

まず、国内ではスマートフォンの高い普及率に伴い、モバイルバッテリーの所有者は約5,600万~6,100万人規模に達すると推定されます。そのうち、実際に日常的に持ち歩き、通勤・通学・外出時に使用している層は約35.8%とみられ、実質的な使用者は約1,700万~2,000万人規模と推定されます。本件リスク評価においては、この日常使用者層を母数とすることが妥当です。

次に事故件数についてですが、公的統計ではリチウムイオン電池関連事故が年間約470件報告されております。この中からモバイルバッテリー関連を推定すると、報告ベースで年間約150~300件が一つの目安です。しかし、若年層を中心に事故報告制度の認知度が高いとは言えず、軽微事故や自宅内で収束した発火は未報告となる可能性が高いことから、報告件数は氷山の一角とみるべきです。

報告率を30~50%と仮定すると、実際の事故件数は年間約500~1,000件規模、場合によっては1,500件程度に達する可能性があります。これを日常使用者中央値約1,800万人で割り戻すと、年間事故率は総数に対し約0.003~0.006%程度となります。

数値上は低確率に見えますが、本件の本質は発生頻度ではなく「事象の性質」にあります。モバイルバッテリーはガスコンロやろうそくのように明示的に炎を意識する機器ではなく、バッグ内部や衣類・紙類と密接した状態で無警戒に扱われます。そのため発火は不意に起こり、初期消火の備えがない環境下で可燃物に延焼する危険性を内包しています。1件ごとの事故が住宅火災、車内火災、公共空間での火災へ発展する潜在性を持つ点は無視できません。

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ここで象徴的な例として新宿駅を考えます。ギネス世界記録では、新宿駅の2022年の平均1日当たり旅客通過人数は2,704,703人とされています。仮にこの利用者層が全国平均と同程度にモバイルバッテリーを携帯しているとすれば、そのうち約35.8%、すなわち延べ約96.8万人/日がモバイルバッテリーを携行して新宿駅を通過している計算になります。さらに、前述の実質事故率0.003~0.006%を単純に当てはめると、リスクを持つユーザーに相当する規模は延べ約29~58人/日分に相当します。もちろん、これは新宿駅で毎日その人数が実際に発火するという意味ではなく、巨大ターミナル駅ではリスクの絶対量が日々莫大に集積していることを示すための曝露規模の試算です。

加えて、近年リン酸鉄リチウムイオン(LFP)や半個体電池を採用した安全性向上モデルが市場投入されていますが、価格帯の観点から見ると、依然として従来型のリチウムイオン電池を搭載したレガシーモデルが流通・使用の大半を占めていると推定されます。市場構成比としては、保護機能が限定的な従来型モデルがなお90%以上使用されていると考えられ、安全性向上モデルへの全面移行には時間を要する状況です。

また、テレビ報道やニュース番組では、ごみ収集車火災や公共交通機関内での発火事故が定期的に取り上げられており、消費者の潜在的不安は一定水準で存在しています。これは「事故確率は低いが、発生時のインパクトが強い」典型的なリスク認知構造です。

以上を踏まえ、防護ポーチの市場性を以下のように推定いたします。

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日常使用者:約1,700万~2,000万人
このうち、安全対策に関心を持つ層を5~10%と仮定した場合、初期ターゲット市場は約85万~200万人規模となります。

さらに、報道影響やECレビュー拡散などにより認知が拡大した場合、普及率が15%に達すると仮定すれば、約250万~300万個規模の潜在需要が見込まれます。

単年度販売予測としては、
保守的シナリオ:年間20万~50万個
中位シナリオ:年間50万~100万個
拡大型シナリオ:年間100万個超

と推定されます。

特に、学校・法人・自治体・企業備品向けのBtoB導入が進んだ場合、市場規模はさらに拡大する可能性があります。

総合的に見ると、モバイルバッテリーは広範に普及し、なおレガシーモデルが大多数を占める過渡期にあります。事故は低頻度ではあるものの、発生時の被害ポテンシャルは高く、不意性を伴います。また、公共交通機関での発火事故報道も近年多くなされています。この構造下では、発火そのものを完全に防ぐのではなく、被害拡大を抑制する不燃ポーチは合理的かつ実用的な安全対策として位置付けられます。

文責:精炭テクノ株式会社 統括部長 鈴木太一

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